方式が緩和された自筆証書遺言に関する裁判例
2022.02.01
方式が緩和された自筆証書遺言に関する裁判例
遺言書に関する裁判例(札幌地裁令和3年9月24日判決)が判例タイムズ1490号に掲載されていましたので、紹介させていただきます。
代表的な遺言の方式として、公正証書遺言と自筆証書遺言が挙げられますが、紹介させていただく裁判例は自筆証書遺言に関するものです。
民法改正による方式の緩和
平成30年の改正により、平成31年1月13日以降に作成された自筆証書遺言の方式が緩和されました。
これまでは、自筆証書遺言をする場合は、遺言をする方(遺言者)が、遺言書の全文、日付及び氏名を遺言者自身で書いて、これに印を押さなければなりませんでした。
財産目録の添付方法
しかし、改正により、自筆証書によって遺言をする場合でも,例外的に,自筆証書に財産目録を添付するときは,その目録については自書しなくてもよいことになりました(自書によらない財産目録を添付する場合には,遺言者は,その財産目録の各頁に署名押印をしなければならず、財産目録の記載が紙の両面にある場合には,両面にそれぞれ署名押印をしなければなりません。 )。
自筆証書に財産目録を添付する方法について,特別な定めはありませんが、本文と財産目録が一体てあることを明らかにするために、ホッチキスでとめたり、契印したりするなどの対処をしておくことが望ましいです。
事案
本件は、改正後の令和元年12月30日付け自筆証書遺言の有効性が争われた事案です。
自筆証書遺言には、ワープロ打ち(古い表現ですね。)により作成された財産目録が添付されていたのですが、財産目録に署名押印がありませんでした。
裁判所の判断
判決は、署名押印されていない財産目録自体は無効になるとしたものの、「当該目録が付随的・付加的意味をもつにとどまり、その部分を除外しても遺言の趣旨が十分に理解され得るときには、当該自筆証書遺言の全体が無効となるものではないというべき」として、本件自筆証書遺言の全体が無効となるということはできないと判断しました。
コメント
法改正により、自筆証書遺言の方式が利用しやすくなりましたが、方式を整えなければ、遺言の全体または一部が無効になってしまいますので、注意が必要になります。
また、自筆証書遺言ですと、その内容が遺言者の意思に基づくものかどうかについて争われることが多くありますので、そのような争いを未然に防ぐためにも、公証人と証人2名が立ち会って作成される公正証書遺言が利用されるケースが多いように思います。
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